下記の数字は、平成10年から21年までに、全国の地方裁判所で新たに破産事件を受け付けた件数です。

地方裁判所での破産事件の新受事件数

平成10年 111,067件
平成11年 128,488件
平成12年 145,858件
平成13年 168,811件
平成14年 224,467件
平成15年 251,800件
平成16年 220,261件
平成17年 193,179件
平成18年 174,861件
平成19年 157,889件
平成20年 140,941件
平成21年 137,957件

破産事件の新受事件数

数字は法人等と自然人(個人)の合計ですが、比率としては自然人が多数(平成21年は法人等11,424件、自然人126,533件)なので、このデータから個人の自己破産申立件数の推移を読み取っても差し支えないと思います。

具体的な破産事件の件数を見ると、平成15年の251,800件をピークに平成21年の134,957件に至るまで減少を続けています。

平成22年のデータは不明ですが、改正貸金業法の完全施行により、過剰貸付を防ぐための総量規制が導入されました(総量規制については下記を参照)。これにより、新たな借り入れができなくなった方が自己破産に追い込まれるケースが増えるとの予想もあり、このまま破産事件の件数が減少していくとは限りません。

また、平成15年をピークに破産事件の件数が減少していることについても、単に多重債務で苦しむ方が減ったということではないと考えられます。

たとえば、平成16年2月の最高裁判決により利息制限法の制限利率を超える、いわゆるグレーゾーン金利が一切認められ無くなったことで、自己破産ではなく任意整理による債務整理が可能な方が増えたこと。さらに、平成15年7月から新たに認定司法書士が誕生し、認定司法書士が積極的に任意整理を行うようになったことも一つの原因でしょう。

ご参考として、個人再生事件の新受事件数についても下記に示します。個人債務者のための民事再生手続の制度ができたのが平成13年で、平成15年以降は極端な変動はありませんから、自己破産が減った分が個人民事再生に移行しているわけでも無さそうです。

個人再生事件の新受事件数

平成13年 6,210件
平成14年 13,498件
平成15年 23,612件
平成16年 26,346件
平成17年 26,048件
平成18年 26,113件
平成19年 27,672件
平成20年 24,052件
平成21年 20,731件

個人再生事件の新受事件数

長きに渡って日本経済が低迷している現状では、収入減等により多重債務に苦しんでいる方の数が、自己破産申立件数と同様に一貫して減少傾向にあったとは考えられません。よって、やはり自己破産申立件数が減った分、任意整理をする方が増えていたのだろうと推測するのが妥当でしょう。

また、全体としては減ったとはいえ、自己破産をされる方の数がとても多いことに変わりはありません。たとえば、平成17年から平成21年の5年間での、自然人(個人)の自己破産申立件数は756,201件です。

余談ですが、5年間で75万人とは大変な数ですから、当然、周囲にも自己破産をした方は多数いることになります。それでも、自己破産をした方の噂を聞くことがあまり多く無いのは、自己破産をしても周りの方に知られる可能性が低いことの証だともいえます。

加えて、東京地方裁判所における個人の自己破産申立件数は、平成21年までの6年間のデータでは2万2千件台から2万5千件台の間で推移しており、大幅な減少は見られません。つまり、自己破産申立件数の増減は地域による違いもあり、全国的に一貫して減り続けているわけでは無いのです。

したがって、上記の数字のみから多重債務についての現状を理解するのは困難です。しかし、全国的に見れば自己破産申立件数は減っているとはいえ、それが直ちに多重債務に苦しむ方が減少していることを現すわけで無いのは間違いありません。

総量規制とは

総量規制の内容は次の通りです。

貸金業者に借り手の返済能力の調査を義務づける(個人が借り手の場合には、指定信用情報機関の信用情報の使用を義務づけ)
1) 自社からの借入残高が50万円超となる貸付け
2) 総借入残高が100万円超となる貸付け
上記のいずれかに該当するときは、年収等の資料の取得を義務づける
調査の結果、総借入残高が年収の3分の1を超える貸付けなど、返済能力を超えた貸付けを禁止する
※内閣府令で売却可能な資産がある場合などを除きます。