借金の全額をいったん返済し終わった後に、期間を置いて再借入をした場合でも、完済時に解約の手続きをしていないのであれば取引は終了していないと考えられます。よって、途中完済があったとしても、一番はじめに借りたときにさかのぼって、全ての取引を一連一体のものとして再計算すれば良いのです。

ただし、たとえ完済時に解約していなかったとしても、途中完済がある場合には、相手方からは完済の前後が別取引であるとの主張がなされることも多いです。

そのような場合でも、司法書士が交渉をすることで、一連の取引であるとして過払い金の返還を受けられる場合もありますが、相手方と合意に至らなければ訴訟を提起することもあります。

ただし、過払い金返還請求訴訟においても、途中完済したときから期間を空けての再借入の場合には、裁判所が一連計算を認めないことがあるのは、QA2「取引はいつ終了するのか」で述べたとおりです。

取引が2つ以上の場合の過払い金の計算は

一旦完済した際に基本契約を解約し、その後、再び借り入れをした場合には、全ての取引を一連計算するのは困難です。自らの意思で解約をしている以上は、そこで取引が終了しているのは明らかであり、再借入にともない契約書を作成したときから新たな取引がはじまったと考えるべきでしょう。

また、途中完済時に解約していなかったとしても、再借り入れまでに数年の空白期間があったような場合も、通常は別々の取引だと判断せざるを得ません。

このように取引が2つ以上であると考えるときは、それぞれの取引を個別に再計算します。そして、その計算結果を差し引きすることで過払い金を算出することになります。たとえば、一つ目の取引が50万円の過払いで、二つめが20万円の過払いであったなら、過払い金は合計70万円です。

そして、もしも一つ目の取引は50万円の過払いだが、二つ目の取引は20万円の借入れ元本が残るという場合には、過払い金が30万円となります。つまり、たとえ一連計算が認められないとしても、以前の取引による過払い金と、現在の取引の借入れ元本とを相殺することができるわけです。

ただし、二つの取引を一連一体のものとして再計算した場合と、個々に計算したのを合算した場合では、前者の方が過払い請求をする側にとって有利な結果となります。そのため、依頼を受けた司法書士としては、可能な限り一連の取引としての再計算をおこなえるよう主張をしていきます。

途中完済から10年以上経っている場合の過払い金の計算は

途中完済から10年以上が経っている場合、その途中完済時に取引が終了していたと判断されるならば、過払い金返還請求権は時効により消滅していると考えられます。したがって、再借入後の取引のみについて過払い金の計算をするしかありません。

ただし、途中完済から10年以上が経っているとしても、取引終了はもっと後だと考えるならば、最初の取引分についても過払い金の計算を行い、返還請求できる余地はあります。自己判断であきらめずに、専門家(認定司法書士、または弁護士)に早急に相談してみるのが良いでしょう。