銀行、消費者金融(サラ金)、クレジットカード会社からの債務(ローン、キャッシング、ショッピング)については、5年間で消滅時効が完成します。最後に返済した時から5年間をはるかに過ぎているのであれば問題ないとして、5年間が経過しているかどうか微妙な場合には、いつの時点から時効期間がスタートするのかを正しく知る必要があります。

消滅時効の完成の時期はいつなのか

1.時効期間について

2.消滅時効の5年間はいつ開始するのか

3.時効の中断について

4.判決で確定した権利の消滅時効

5.時効の利益の放棄とは

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1.時効期間について

(2021/07/16追記)

民法改正により令和2年4月1日から、債権の消滅時効期間が変更されています。改正前は「債権は、10年間行使しないときは、消滅する」と定められていたのが、下記のとおり5年に変更になったのです。

債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、時効により消滅する(民法166条)。

上記の民法改正により、商事消滅時効(商法522条)の規定は削除されました。商行為にあたるかどうかに関係なく、債権の消滅時効は5年となったわけです。

ただし、令和2年4月1日の施行前に生じた債権については新法が適用されず従前の定めに従うことになります。

このページのこれ以降の記述は、改正前の民法によっています。くわしくは、専門家(弁護士、司法書士)にご相談ください。

(2022/01/27追記)

当事務所ウェブサイトに、借金の消滅時効(時効期間、中断・更新の平成29年民法改正)を追加しました。

債権の消滅時効の原則は10年です(民法167条1項)。ただし、商行為によって生じた債権については、5年間行使しないときは、時効によって消滅するのが原則です(商法522条本文)。

会社である、銀行、消費者金融(サラ金)、クレジットカード会社からの債務は、「商行為によって生じた債権」に該当するので、5年間で消滅時効が完成することとなります。

2.消滅時効の5年間はいつ開始するのか

時効期間が5年の債権については、最後に支払った時から5年間が経過していれば、消滅時効が完成していると考えて良いでしょう。ただし、もっと正確に時効の完成時期を判断する際には次のように考えます。

まず、「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する」とされています(民法166条1項)。

「権利を行使することができる時」とは、債権者が、債務者に対して支払ってくれと請求できる時です。このような請求ができるのは、支払期日が経過した時です。

たとえば、毎月末日が支払期日だったとして、2013年4月は月末までに支払ったとすれば、次の支払期日は2013年5月31日です。

この場合、債権者としては支払期日である5月31日が過ぎるまでは請求をすることはできません。「支払期日は5月31日なので遅れないでくださいね」とは言えたとしても、「今すぐに支払ってください」と請求することはできないわけです。

ところが、支払いが無いまま6月1日を迎えたとすれば、すでに支払期日が経過しているわけですから、今すぐ支払うよう請求することができることになります。よって、消滅時効期間である5年は、支払期日の翌日である2013年6月1日からスタートします。

そして、消滅時効が完成するのは、2013年6月1日から5年後の2018年6月30日が経過した時となります。

債権者から通知書が送られてきている場合には、弁済期、支払期限、返済期日、債務弁済約定日、次回支払日、期限の利益喪失日などとして書かれている日があれば、時効期間の開始時期を知ることができます。

ただし、とくに債権回収会社からの通知などの場合には、期限の利益喪失日として債権譲渡がおこなわれた日が書かれているようなときもあります。このような場合でも、消滅時効が完成するのは、当初の借入先との間で支払期日を経過した時(期限の利益を喪失した時)ですから、判断に困るときは専門家に相談するべきです。

3.時効の中断について

時効の中断があると、それまで経過していた時効期間がゼロに戻ってしまいます。つまり、5年間が経過する直前に時効が中断したら、その時点から5年間が経過しないと時効が完成しないのです。時効の中断は以下の事由により生じます(民法147条)。

1.請求
2.差押え、仮差押え、仮処分
3.承認

1の「請求」は、たんに請求書や督促状を送っただけでは足りず、訴訟の提起や支払督促など法的手続きによらなければ時効は中断しません

また、裁判上の請求ではなく、請求書、督促状、訴訟予告通知書などを送ったという場合には、請求ではなく「催告」に当たります。催告をしたときには、その後6ヶ月以内に時効中断事由となる訴訟上の請求などをすることで時効が中断します。

催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない(民法153条)

よって、消滅時効の完成が迫っている場合、請求書を送ることなどよって取り急ぎ「催告」をしておき、その後6ヶ月以内に訴訟や支払督促などをすれば時効が中断するということです。

ただし、催告により、消滅時効の完成が延長されるのは一度きりですから、その後に催告を繰り返しても再び時効期間を延長できるわけではありません。したがって、債権者からずっと請求書などが届いていたとしても、5年間の時効期間が経過すれば消滅時効は完成します。

3の「承認」は、債務者が債務の存在を認めることです。消滅時効の時効期間が過ぎる前に、自分に支払い義務があることを認めると、その時点で時効が中断してしまいます。

債権者からの督促に対して、口頭で返済の猶予を求めたような場合でも、時効の中断事由とみなされる可能性もあります。たとえば、「払うつもりはあるけど、少し待ってくれ」と言ってしまったような場合です。

また、そのうち支払うことを前提にして話し合いをしてしまったような場合も問題ですが、それよりも明らかな時効の中断事由となるのは、一部(少額)であっても返済してしまった場合です。

消滅時効の完成時期が近づいてくると督促が激しくなることがあります。訴訟の予告をしつつ大幅な利息や元本の支払免除を持ちかけてくるケースもあります。債権者が訪問してきたために少額の支払いをしてしまったようなときでも、その後の消滅時効援用が認められることもありますから、すぐに諦めずに専門家に相談するのがよいでしょう。

4.判決で確定した権利の消滅時効

裁判所での判決などにより権利が確定している場合、消滅時効期間は権利確定の時から10年となります。

確定判決によって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする(民法174条の2第1項)

時効が完成する前に裁判を起こされて、判決が確定してしまったとすれば、消滅時効期間は判決確定のときから10年間となります。また、時効期間である5年間が経過した後に裁判を起こされた場合でも、判決が確定してしまえば10年間は時効が完成しません。

ただし、時効期間が経過した後に裁判を起こされた場合には、裁判上で消滅時効の援用をすれば支払い義務が消滅します。これに対し、裁判を起こされたのにちゃんと対応をしなければ、それから10年間は支払い義務が残ることとなってしまうわけです。

債権者から裁判を起こされたときは、最後の返済の時から何年経っていようと、必ず答弁書を提出するなどの対応をするべきです。ご自分で対応するのは困難でしょうから、すぐに専門家(認定司法書士、弁護士)に相談するようにしてください。

5.時効の利益の放棄とは

時効の利益の放棄とは、時効の完成による利益を受けないとの意思表示をすることです。時効の利益を放棄した後には、その時効の援用をすることができなくなります。債権の消滅時効の場合でいえば、消滅時効が完成した後に債務の弁済や承認をすれば、時効の利益を放棄したものとみなされます。

すでに時効が完成しているならば、その後に債務の弁済や承認をしても、時効の中断が問題になることはありません。しかし、この場合には時効の利益を放棄したことになるので、再び時効期間が経過するまでは時効が完成しないことになるわけです。

時効の利益は、あらかじめ放棄することができないとされています(民法146条)。つまり、時効の利益を放棄できるのは、時効の完成後に限られます。これは、債権の消滅時効においては、債権者が債務者に対してあらかじめ時効の利益を放棄するよう強要するのを避けるためなどが理由です。

なお、消滅時効が完成する前に債務の弁済や承認をしたときには時効が中断するのであり、これは時効の利益の放棄とは別の問題です。

時効完成後、その事実を知らずに債務承認をした場合

時効が完成していることを知らずに、元本や利息の一部であっても支払いをしてしまった場合でも、時効の利益を放棄したものとする判断が下記の判例により示されています(最判昭和41年4月20日)。

債務者が、自己の負担する債務について時効が完成したのちに、債権者に対し債務の承認をした以上、時効完成の事実を知らなかったときでも、爾後その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと解するのが相当である。けだし、時効の完成後、債務者が債務の承認をすることは、時効による債務消滅の主張と相容れない行為であり、相手方においても債務者はもはや時効の援用をしない趣旨であると考えるであろうから、その後においては債務者に時効の援用を認めないものと解するのが、信義則に照らし、相当であるからである。

けれども、貸金業者からの執拗な取立行為などにより支払いをしてしまった場合などでは、その後の、時効援用を認めるとした下級審の判決も複数出ています。1度支払ってしまったからといって諦めてしまうのでは無く、専門家に相談してみるのがよいでしょう。

被告の一部弁済によって原告らに信義則上保護に値する期待が生じるとは言い難く、他方、時効完成を知らずに、原告らに言われるままに支払をした被告が、その後時効完成の事実を知って、時効を援用することが信義則に反すると評価するのは酷にすぎる。したがって、本件においては、被告の時効援用権の行使は信義則による制限を受けないと解するのが妥当である(札幌簡裁平成10年12月22日判決)。

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