個人民事再生では、再生債務者が保有する財産の「清算価値」以上の金額を弁済する必要があります。

たとえば、住宅ローン以外の債務が500万円の場合、民事再生法231条2項に定められた最低弁済額(計画弁済総額の下限)は、債務総額の5分の1である100万円です。しかし、清算価値が100万円を超えるときには、その金額が最低弁済額となります。

財産の「清算価値」とは

清算価値とは、財産を現時点で換金した場合の総額のことです。清算価値の評価対象となる主なものは、現金、預貯金、生命保険の解約返戻金、退職金、自動車、不動産などであり、特別に高額なものが存在する場合を除いては、それ以外の家財道具などは通常考える必要はありません。

上記のうち退職金については、退職金見込額の8分の1を清算価値としている裁判所が多いと思われます。その他のものは、実際の現在価額を清算価値としますが、財産の合計金額が100万円を超えるケースは多くありません。

ただし、不動産に関しては、現在価額よりも住宅ローンが少ない場合には、清算価値が高額になることがあるので要注意です。

不動産の清算価値

不動産の清算価値は、不動産の現在価額から、住宅ローンの残債務額を差し引いた金額です。

したがって、住宅ローンの残債務額の方が多い、いわゆるオーバーローンの状態にある場合には、清算価値がゼロとなりますから問題になりません。けれども、頭金を多く入れているときや、長年にわたって返済をしてきたような場合には、住宅ローンの残額の方が少なくなっているケースもあります。

もしも、住宅ローンの残りが500万円、不動産の価格が1000万円なら清算価値は500万円ですから、個人民事再生を利用したときの最低弁済額も500万円以上となってしまいます。これでは、手続きをする意味はありません。

なお、不動産の価格は実際に売却してみなければ、いくらになるのかは分かりませんから、現在価格を正確に知る手段はありません。そこで、清算価値を算出するための根拠資料として、まずは、固定資産評価証明書を取得します。

固定資産評価額は実勢価格よりも低いのが通常です。それでも、明らかにオーバーローンであると考えられる場合には、不動産の清算価値を算出するのに当たって、固定資産評価証明書だけで足りることもあります。

しかし、住宅ローンの残債務額が固定資産評価額の1.5倍程度あるときでも、不動産業者による査定書の提出を求められることもあると思われます。固定資産評価額と住宅ローン残額を比較しただけで、オーバーローンだから清算価値の対象にならないはずだと安易に考えるべきではありません。

個人民事再生を利用するに当たっては、事前に検討すべきことが数多くあります。経験豊富な専門家に相談した上で、手続きを進めていくことをお勧めします。当事務所では、多数の個人民事再生手続きを取り扱っていますから、安心してご相談ください。