自己破産申立をすると、本来であれば申立人(破産者)が持っている財産を、お金に換えて(換価して)債権者に配当します。これを破産手続といいます。

しかし、破産者が持っている財産が、破産手続をするために破産管財人に支払う費用に足りない場合には、配当する財産が無いわけですから破産手続をする意味がありません。そこで、このようなときには破産手続を行わないこととしたのです。

これを、同時破産廃止手続きといいます。これは、破産手続を開始する(破産宣告を出す)のと同時に、「破産手続を廃止する」との決定を出すことです。破産手続を開始したのと同時に、破産手続を廃止してしまうのですから、つまり実際には破産手続を行わないことになります。

2017年11月1日以降、千葉地方裁判所管内での管財事件になるかどうかの基準は次のとおりです。

まず、現金については、33万円以上の現金がある場合(直前に現金化されたものを含む)には管財事件となるのが原則です。現金以外の財産(預貯金、保険の解約返戻金、自動車、退職金請求権など)については、その項目ごとに合算した財産の額が20万円以上の場合に原則として管財事件となります。

たとえば、現金が35万円だと管財事件になりますが、現金30万円と保険解約返戻金が15万円ならば同時廃止となるわけです。財産の総額は後者の方が多くても、上記の基準により同時廃止と管財事件の振り分けがされているのです。

ただし、千葉地方裁判所による解説では『特に価値がある財産を持っていない人でも、使途不明の借入金や不自然な支出がある場合など、破産に至る経緯が明らかでないときには,破産管財人を選任して,財産の調査等を行わなければならないこともあります』とされています。単に財産の額だけで決まるということでは無いわけです。

一方では、現金以外の財産の額が20万円以上である場合であっても、管財事件にならないこともあるようです。当事務所で書類作成をしたケースで、財産目録に20万円を超える評価額の記載をしていたのに同時廃止になったことがありました。

しかし、このケースでは管財事件になってもやむを得ないとの判断のもとに申立をしたところが同時廃止となったものであり、基準額を上回っているときは当然に管財事件になると考えておくべきでしょう。